炉炎溶錬の心
BRACER
鋳造者の推察
その時、氷雪の国の蒼白き皇帝が漆黒の濁流に呑み込まれるまで、まだ長い時間が残されていた。 キッチェヴに生まれた若き小さき者は、これから自分の身に起ころうとしていることを、まだ何も知らなかった。 凍土の上を駄獣が引く荷車に乗って雪に覆われた旧都を離れるとき、彼はふもとに広がる故郷を振り返った。 遠ざかっていくそりの上で荷箱の間から見た光景が、故郷を望む最後の瞬間となった。 彼は小さき者の中でも名のある者の署名入り推薦状を胸に抱き、永燃炉心の扉を押し開けた。 山のようにそびえ立つ巨大な機械が昼夜を問わず稼働し、熱波を巻き込んだ轟音が彼の耳を突いた。 それに驚いたり恐れを感じることもなく、若き小さき者の高鳴る鼓動がすべての感情を押しのけた。 目の前にあるのは絶好の、生涯で唯一のチャンスだと理解した。 大公たちの慈悲深い法律によれば、王に愛された人間は煩雑な重労働を負うべきではないし、 人間はフェイのように巨石を運ぶような力も、あらゆることに対処できる器用さも持ち合わせていないのだ。 若き小さき者は、まさにその言葉を証明する最良の証拠となった。 彼は聴覚が鋭く、炉心の稼働音だけでメンテナンスが必要な箇所を察知できた。 身のこなしも優れていたため、鋼鉄で組まれた細いパイプの上を飛ぶように渡り歩くことができた。 そして都市へのエネルギー供給の管理と、クルースニク晶鉱への理解に至っては—— 若き小さき者がその分野に長けていたからこそ、重用され推薦されたのだった。 このままいけば、ここで管理人になれるかもしれない。そして十分な経歴を積めば、 光炉の運用を取り仕切る会長の座だって、多少は高望みできるかもしれない。 ある夜、小さき者の大公がプライベートな宴の席を開くまでは、そう思っていた。 鉱業とエネルギーの年老いた支配人が、彼に命じた。 「より偉大な事業のためには君の貢献が必要だ。イズマイール、君には極秘の計画に参加してもらいたいのだ。」 「君の才能がここだけに留まるものではないということは、ずっと君を観察してきた私には分かる。君が必要なのだ。全員の行動を監視してほしい…」
